障害者の「大阪都構想」への疑問・不安について
障害者の「大阪都構想」への疑問・不安について 2020年10月
障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議(障大連)
◆ 住民投票こそ「不要不急」であり、今再び実施することそのものが疑問です。
・5年前の住民投票で否決されたのに、またしても住民投票を実施するのはおかしい。
・どの福祉事業所も新型コロナへの対応が続いており、コロナ対策を最優先すべき。
・市民、障害者がどんな影響を受けるか説明もないまま住民投票を実施するのは問題。
・制度や仕組みがどう変わるか誰もわからないまま「決まってから考える」のは危険。
◆ 大阪市がなくされることでの障害者や高齢者への影響は甚大です。
・大阪市の財源を府に吸い上げ、「成長戦略」やカジノに使う構造は前回と全く同じ。
各特別区に対して財政調整するというが、府からの「おこづかい制」になるとのこと。
今の市の予算は大きく減るため、各特別区の福祉予算も引き下がる恐れが高い。
・市の説明資料でも、「特別区設置の際は、特色ある住民サービスは内容や水準は維持する」「特別区設置の日以降も地域の状況や住民ニーズもふまえながら内容や水準を維持するよう努めます」と記されているだけで、「必ずずっと維持する」とは書かれていません。
・障害者にとっては、今でも「二重行政」などありません。特別区に分かれ、一部事務組合もできることで、更に複雑で利用しにくい仕組みになってしまいます。
・障害福祉制度はかなり複雑になっており、今でも市が区の質問に答えたり、区の間違いを正したりしていますが、職員の連携・スキルが維持できるでしょうか?
・「住民に身近なことは身近で決める」(ニア・イズ・ベター)と言われますが、今でも区間格差があり、市が分割されることで更に格差が広がる恐れがあります。
障害者にとっては生活基盤に大きく影響する問題であり、「分割は最悪」です。
*各特別区の障害者数と税収
各特別区 人 口 障害者数(障害手帳交付数) 税収(個人市民税)
北 区 ① 749,303人 ② 52,465人(25.5%) ① 453億円
中央区 ② 709,516人 ① 58,710人(28.5%) ② 379億円
天王寺区 ③ 636,454人 ③ 52,019人(25.3%) ③ 342億円
淀川区 ④ 595,912人 ④ 42,588人(20.7%) ④ 289億円
計 2,691,185人 205,782人(100%) 1464億円
◆ 障害者は日々、様々な制度を利用して暮らしています。
・大阪市では、重度の障害者も入所施設ではなく、多くの方が地域で暮らしています。
障害者は日々、様々な障害福祉サービス(制度)を組み合わせて生活しています。
・日々の暮らしを支えるサービスはまだまだ不足しており、ギリギリの状態です。
障害福祉サービスが少しでも引き下がれば、暮らしを直撃し生活が成り立ちません。
・まだ何十年も入所施設や精神病院で暮らしている人も多く、地域移行も進みません。 サービスにつながっていない8050問題や死亡事案が市内で相次いでいます。
・市長や府知事は、こうした障害者の生活状況をどこまでご存じなのでしょうか?
◆ 障害者は「都構想」に関して様々な不安を抱いています。
「障害福祉サービスは特別区で実施」と示されているだけで、各制度や仕組みがどう変わるか担当部局でもわかりません。わからないことばかりで障害者は大変不安です。
① 障害者の各種サービスが引き下がらないか?
・サービス量(介護時間数など)、報酬単価(級地区分による加算率が全国で2番目に高い)、事業の委託料、基準時間数以上に介護が必要な場合の加算(非定型申請)や、家事援助等の取扱・利用制限が、特別区によって変わってくる恐れがあります。
・特に地域事業とされている「地域生活支援事業」は国からの財源保障が少ないため今でも厳しく、維持できなくなる恐れが高い。ガイドヘルパー(移動支援)や盲ろう者の通訳・介助事業、精神障害者の地域活動支援センター(日中支援)など。
・市独自の単独事業がなくならないか? 住宅の改造費補助、グループホーム整備費補助、入院時サポート事業、障害者医療費助成、大阪メトロやシティバスの運賃減免制度、駅のホーム柵やエレベーターの設置助成など、いずれも暮らしに欠かせない制度です。
② 今まで通り、各種サービスが利用できるか?
・特別区同士が別の自治体になることで、区によって制度の運用や利用基準が変わり、各区でのサービス利用や、区をまたがった利用で支障が出る恐れ。
・福祉サービスだけでなく、生活保護の基準や考え方、基盤整備のための障害者計画・福祉計画、事業所の指定・指導、虐待防止・差別解消の仕組み、各種委員会も各特別区で実施。
③ 地域基盤の格差が更に広がらないか?
・今も障害福祉事業所の数は区によって違い、特別区に分かれると更に格差が広がる。
グループホームや相談支援は倍以上の格差、介護事業所、日中活動等の地域格差もある。
親元からの自立や施設・病院からの地域移行、幼保・学校での障害児の受入れにも影響。
・虐待ケースや8050問題等、緊急対応が必要なケースにすぐに対応できるか?
緊急保護する受け皿は今もなかなか見つからないのに、特別区内だけでは到底困難。
④ 各部局・機関の連携が今までどおり維持できるか?
・健康局(感染症対策・保健所等)と福祉局の連携は、この間のコロナ対応でも混乱。
・65歳からは介護保険と障害福祉の両サービスを併用していますが、今でも混乱。
・精神保健福祉センター「こころの健康センター」は府に移管され存続できるか?
・市社協、区社協は一旦廃止され、従来、社協で実施されてきた「区分認定調査」や「あんしんさぽーと」等、生活に必須の仕組みすらまだどうなるかわかりません。
(*区分認定調査は各種サービス利用の前提となる障害支援区分6~1の判定の仕組みで、その調査員は社協が受託。あんしんさぽーとは障害者・高齢者の金銭管理サービスで今後は府社協で実施?)
⑤ 防災や消防の連携が今までどおり維持できるか?
・防災計画、要支援者避難支援計画、避難所運営マニュアルは各特別区で作成。台風・豪雨災害は年々激しさを増し、発災時に特別区同士や消防が迅速に連携できるか?
・避難所が今でも足りず、水害時の車いす利用者等の垂直避難や、コロナ感染防止対策で、もっと多くの避難所が必要ですが区レベルではとても確保しきれません。
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